ニベアをガッテン塗りで美肌になれるのか

一時期、流行りましたね。
『ニベアのガッテン塗り』
あれをまだやっている人はいるでしょうか。

某超高級保湿クリームと、成分がほぼ同じだとかで話題になりました。
(その高級クリームと比べて、ニベアに足りない部分こそが重要だと思いますが)

洗顔後、化粧水をつけずに、ニベアだけを肌になじませる。
ニベアはテクスチャが固いので、手に取って両手をこすり合わせてから、柔らかくしてハンドプレスでつける。
などなど、やたらに細かいレクチャーをする人もいました。

ニベア以外にも、ちふれのボラージクリームがいいとか。
いやはや、ユースキンがいいとか。
色んな説も飛び交いましたが、要点は一つ。
『それ以外の物を使わないで保湿する』

この情報を目にしたとき、何でハンドクリームなんだろうと思った覚えがあります。
ユースキンもニベアもハンドクリームですよね。
なんでそれを顔に使わなきゃならんのでしょうか。
不思議で仕方なかったです。

肌に油分だけを塗りたくることが、保湿になると考えること自体、ちょっとした勘違いです。
加齢や肌質で、皮脂量が極端に減っている場合であれば、油分の供給も必要です。
油分があることで、肌の常在菌が天然保湿因子を作ってくれるという作用もあります。
ですが、もともと皮脂量が十分にあるなら、なにもハンドクリームを塗りたくる必要はありません。

よくある誤解の一つに『油分でフタをして、化粧水の水分を閉じ込める』というものもあります。
油分が肌の表面に張り付いて、フタをしてくれるということはありません。
化粧水が肌の水分になることもありません。
これはスキンケアを根本から理解できていないことに等しいのです。

確かに油分は水分の蒸発を『ある程度』防いでくれる働きはあります。
ただし、油分が肌の保湿に関わる影響度は2~3%です。
油分をしっかり塗ったつもりでも、その隙間から水分はどんどん蒸発します。
それはニベアでもユースキンでも同じこと。
ガサガサと乾燥する手に、ニベアをしっかり塗りこんだところで、しばらくすれば乾燥します。
手を洗ったりしていなくても、乾燥してきますから、時々塗り直したりもします。
皮膚が薄い顔なら尚更乾燥しやすいものです。

保湿とは、『肌の水分を保ち、湿った状態を維持すること』
油分がガッツリ塗ったところで、蒸発するのでは保湿とは言えないのです。

肌の保湿に関わる油分の影響度が2~3%だと言いましたが、ほかに影響しているものは何でしょうか。
答えは
NMF(天然保湿因子)…17~18%
細胞間脂質(セラミドなど)…80%
です。
もちろん、皮脂膜にも2~3%とはいえ、重要な役割はあります。
ですが、ベタベタとクリームを塗りたくってハイおしまい、というのが保湿とは言えないですよね。

しかし、ニベアのガッテン塗りで、お肌がきれいになったと言われる方も多いようです。
ニベアのガッテン塗りこそが、肌にぴったりなスキンケア…といわれる方は、どんな肌質なのでしょうか。
答えは簡単です。
『もともと何もつけなくてもいいくらい、丈夫な肌質』
肌が丈夫なのですから、ちょっとくらい油分が過剰でも問題なし。
そういう肌質の人であれば、何もしないスキンケアだろうが、肌断食だろうが、ガッテン塗りだろうが、まず関係ありません。

ニベアのガッテン塗りで、乾燥肌が改善した。
ニベアのガッテン塗りで、敏感肌が治った。
…これはありえません。
もともと丈夫な肌質なのに、必要以上にこすったり、化粧水をつけすぎたり、必要以上の保湿成分を塗りたくったり…という保湿過剰。
これが元でトラブルになっていただけです。
隠れ乾燥肌とか、隠れ敏感肌などという言葉にとらわれ過ぎた、自称乾燥性敏感肌。
そういう人はたくさんいます。
自称乾燥性敏感肌なら、ニベアで改善する可能性はあります。
不必要なスキンケアを減らしただけですからね。

結論を出すと、
・ニベアのガッテン塗りで美肌になれるのは、丈夫な肌質の人だけ
・乾燥肌・敏感肌の人には効果なし
ということになります。

保湿とは結局何なのか

肌にとって保湿はとても重要です。
が、保湿とはなんであるかを理解している人は意外に少ないです。

『化粧水でたっぷり水分を与えて、その水分が逃げないように乳液やクリームでフタをする』
『毎日ローションパックを習慣にする』
『皮脂が多いのは、スキンケアで油分を与えないせい』
こういうスキンケア理論が、普通にまかり通っています。

また反対に
『あれこれつけるのは間違い。ニベアだけ塗ってればいい』
『欧米ではスキンケアはクリームだけっていうのがふつう』
などという人もいらっしゃいます。

化粧水をたくさんつけるのは、逆に肌を乾燥させるし、油分でフタなんてできません。
ローションパックなどはコットンや化粧水の無駄ばかりではなく、過乾燥の原因になります。
皮脂が多い人に乳液やクリームをつけても、皮脂量がコントロールされることはまずありません。
むしろ油分過剰でニキビができやすくなります。

逆の理論はこれも極論です。
何もつけないスキンケアや、ニベアのガッテン塗り。
洗顔料を使わず、水やぬるま湯だけで洗うとか。
保湿はワセリンで十分とか。
それは保湿とはいいがたいです。
欧米人とアジア人では、肌色だけじゃなくて肌質も違います。
乾燥する土地で暮らし、分厚い角質層をもつ白人さんと、湿度の高い日本に住む日本人。
スキンケアの本質が違います。

それもこれも、保湿する意味が解っていないことからくる、誤解なのかもしれません。

まず、保湿とは何か。その定義を簡単に言うと
『肌が適度な水分を蓄えられるように整え、水分を保持すること』
です。
肌の水分とは、体内から沁みだしてくる水分であり、化粧水に含まれる水ではありません。
この体内から沁みだしてくる水分を、いかに保持するかが保湿の基本です。

肌の水分量は、どうやって維持されるのでしょうか。
皮脂膜による水分の保持…2~3%
天然保湿因子(NMF)による水分の保持…17~18%
細胞間脂質(セラミド)による水分の保持…80%
これらによって、肌の水分は維持されます。

乾燥している肌というのは、天然保湿因子や細胞間脂質の不足によって出来上がります。
油分が多いのに乾燥しているインナードライ肌などが、わかりやすいでしょう。
乾燥を察知して油分を過剰に分泌させる、インナードライ。
乾燥を察知したとしても、油分すら足りない、乾燥肌。

保湿の土台は、角質層の構造を整えることです。
角質層の構造、これをラメラ構造と言います。
ラメラ構造が整っている肌は、細胞間脂質が角質層の隙間を満たしています。
ラメラ構造が乱れている肌は、細胞間脂質が流出しやすいです。
ラメラ構造が乱れている肌には、不足したセラミドを補ってあげるのが一つ。
脱脂力の強い洗顔料や石鹸を避けて、洗いすぎないのが一つ。
肌に住む常在菌を、殺菌し過ぎないのが一つ。
ここをきっちりケアしたうえで、不足するなら油分を与えます。

常在菌は、表皮ブドウ菌やアクネ菌です。
アクネ菌が皮脂を食べると、脂肪酸とグリセリンに分解されます。
脂肪酸によって、肌は弱酸性を保ち、雑菌が繁殖するのを防ぎます。
表皮ブドウ菌が食べて分解した物質は、汗や皮脂と混じって、天然保湿因子を作ります。
アクネ菌はニキビになることもあれば、肌をガードすることもあります。
増えすぎても減りすぎても困るのですね。

健康な肌の人なら、軽く油分を足すだけでも、なにもしなくても、いいでしょう。
メイクをしたり、落としたりするときに与えるダメージだけを、リカバリーすれば良いのです。
化粧水で肌を整えて、乳液をつけておけば、お肌はきれいでいられます。

ですが、乾燥肌や敏感肌の人は、セラミドや保湿成分をしっかり補充しなければなりません。

必要な保湿を必要なだけ。過不足なく、間違えずに続けることが、外側からのスキンケアです。