肌にとって保湿はとても重要です。
が、保湿とはなんであるかを理解している人は意外に少ないです。
『化粧水でたっぷり水分を与えて、その水分が逃げないように乳液やクリームでフタをする』
『毎日ローションパックを習慣にする』
『皮脂が多いのは、スキンケアで油分を与えないせい』
こういうスキンケア理論が、普通にまかり通っています。
また反対に
『あれこれつけるのは間違い。ニベアだけ塗ってればいい』
『欧米ではスキンケアはクリームだけっていうのがふつう』
などという人もいらっしゃいます。
化粧水をたくさんつけるのは、逆に肌を乾燥させるし、油分でフタなんてできません。
ローションパックなどはコットンや化粧水の無駄ばかりではなく、過乾燥の原因になります。
皮脂が多い人に乳液やクリームをつけても、皮脂量がコントロールされることはまずありません。
むしろ油分過剰でニキビができやすくなります。
逆の理論はこれも極論です。
何もつけないスキンケアや、ニベアのガッテン塗り。
洗顔料を使わず、水やぬるま湯だけで洗うとか。
保湿はワセリンで十分とか。
それは保湿とはいいがたいです。
欧米人とアジア人では、肌色だけじゃなくて肌質も違います。
乾燥する土地で暮らし、分厚い角質層をもつ白人さんと、湿度の高い日本に住む日本人。
スキンケアの本質が違います。
それもこれも、保湿する意味が解っていないことからくる、誤解なのかもしれません。
まず、保湿とは何か。その定義を簡単に言うと
『肌が適度な水分を蓄えられるように整え、水分を保持すること』
です。
肌の水分とは、体内から沁みだしてくる水分であり、化粧水に含まれる水ではありません。
この体内から沁みだしてくる水分を、いかに保持するかが保湿の基本です。
肌の水分量は、どうやって維持されるのでしょうか。
皮脂膜による水分の保持…2~3%
天然保湿因子(NMF)による水分の保持…17~18%
細胞間脂質(セラミド)による水分の保持…80%
これらによって、肌の水分は維持されます。
乾燥している肌というのは、天然保湿因子や細胞間脂質の不足によって出来上がります。
油分が多いのに乾燥しているインナードライ肌などが、わかりやすいでしょう。
乾燥を察知して油分を過剰に分泌させる、インナードライ。
乾燥を察知したとしても、油分すら足りない、乾燥肌。
保湿の土台は、角質層の構造を整えることです。
角質層の構造、これをラメラ構造と言います。
ラメラ構造が整っている肌は、細胞間脂質が角質層の隙間を満たしています。
ラメラ構造が乱れている肌は、細胞間脂質が流出しやすいです。
ラメラ構造が乱れている肌には、不足したセラミドを補ってあげるのが一つ。
脱脂力の強い洗顔料や石鹸を避けて、洗いすぎないのが一つ。
肌に住む常在菌を、殺菌し過ぎないのが一つ。
ここをきっちりケアしたうえで、不足するなら油分を与えます。
常在菌は、表皮ブドウ菌やアクネ菌です。
アクネ菌が皮脂を食べると、脂肪酸とグリセリンに分解されます。
脂肪酸によって、肌は弱酸性を保ち、雑菌が繁殖するのを防ぎます。
表皮ブドウ菌が食べて分解した物質は、汗や皮脂と混じって、天然保湿因子を作ります。
アクネ菌はニキビになることもあれば、肌をガードすることもあります。
増えすぎても減りすぎても困るのですね。
健康な肌の人なら、軽く油分を足すだけでも、なにもしなくても、いいでしょう。
メイクをしたり、落としたりするときに与えるダメージだけを、リカバリーすれば良いのです。
化粧水で肌を整えて、乳液をつけておけば、お肌はきれいでいられます。
ですが、乾燥肌や敏感肌の人は、セラミドや保湿成分をしっかり補充しなければなりません。
必要な保湿を必要なだけ。過不足なく、間違えずに続けることが、外側からのスキンケアです。